中身の無い言葉

オシャレ、萌え、パンク、ロック、ネット右翼人間力、愛、平和、正義、オルタナティブ反戦ロハス、カルチャー、オタク、モテ、非モテ、etcetc・・・。
まだ探せば幾らでも有るだろう『中身の無い言葉』。
表層的な様式美や属性やジャンルといった枠としての情報、いうなれば『型』でしかない言葉。
そんな中身の無い言葉が日常に氾濫してるのは、中身が有る言葉を使うと、相手と自分との違いを認識してしまい、ただでさえバラバラな『孤人』である私達は、もっとバラバラにされてしまうから。
だから、うやむやでニュアンス的で中身の無い、玉虫色の言葉を使う。
強固な繋がりも共同体も持てなくなった、ワタシ達のせめてもの抵抗。


http://www2u.biglobe.ne.jp/~captain/sub1_248.htm

こういった“感覚的な物”を他者に伝えるには、それが同嗜好の人が相手でも温度が必要だし、それが「オタクではない人」を相手にする場合、さらに巨大な温度と説得力が必要になる。
けど、これまで書いてきたように、ライトな層はその温度や能力自体がない。

しかも「感覚」ですから、よく言われるように十人十萌え。
同じ作品などに対し「これは萌えですよね」と言っても、実はその言葉を発せさせた感覚や嗜好を解体していくと、個々によってその萌え部分や萌え評価部分は異なっている。
「萌え」という一言で、本来は全く違うはずの評価が「さも、一つであるかのような幻想(あるいはカンチガイ)」をもたらしている。
 “萌え”ってのは、ある意味「偽りの共同幻想を生み出すマジックスペル」です。

中身の無い言葉の中身

何がどうオシャレなのか、萌えなのか、パンクなのかロックなのか、つまり『中身』にあたる部分は個々人それぞれが違うため、ネットの議論では時折、言葉の定義をめぐってのメタコミュニケーションをするハメになる。
そしてその、メタコミュニケーションを面倒くさがったり省略しようとすれば、大多数の人間との間に深い断絶が生まれ、誤解や偏見、相互の差異や対立が生まれ、最悪コミュニケーションすら取れなくなってしまう。*1
一方、繋がる為のツールの反面、その言葉を知らない人や『中身』の差異に気付いてしまった人を排除してしまう『中身の無い言葉』。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~captain/sub1_248.htm

 だから“萌え”ってのは僕にとって、「オタクを名乗る人たちが身から出した錆」の一つだとしか思っていないです。
 自分が好きで気に入ったキャラクターや作品を語ることすら省略し、それを伝えることも放棄している言葉。
 完全に“閉じて”しまっている言葉。

現在の日本はすでに日本的ファシズムと等価な政治的スノビズムに陥っている - 蒼龍のタワゴト~認知科学とか哲学とか~

今の日本じゃ蛸壺化も棲み分けもすっかり進んで、国内の違った領域の人の間でコミュニケーションすることはありえないし不可能だしそもそもやる気がない。他者への想像力を欠いた利己的なネオリベとか、仮想の敵や問題を見つけ出しては必死に叩く自己満足なスノビズムとか、3次元から逃げ出して萌えに走ったオタクとか、現実とは無関係に評論家ごっこするアカデミズムとか、みんなすっかりバラバラだ。いくらネット上で社会問題について語っても、読むのは初めから限定された人たちだけだ*1。

そしてワタシしかいなくなる。

伝統的な共同体は機能不全に陥ったか崩壊し、全共闘の敗北と記号的消費と対人関係が結合した消費社会の到来は、コミュニケーションをとる為の共通コードを失わせた。
そして同じ消費形態を持つ者*2同士の繋がりも、大量のコンテンツによって細かい属性やジャンルによって分解されていく。
そして生まれたのが、そんな人達をかろうじて繋げる為の『中身の無い言葉』
ネットが発達してからは、『中身の無い言葉』で検索したりふるいにかけたりして、より細かい島宇宙でも繋がりを維持できる*3ようになった反面、それができないリアル世界ではもっと孤独化が進んでいく。*4


消費に埋もれ、中身の無い『型』を用いて村社会を楽しむのも、悪くは無い。
でもそれは、ある朝突然現れ夢の様に消えていくサーカスでしかない。
『中身の無い言葉』を使って、繋がったフリをしても結局は独りである。
そして全ての人が孤独に耐えられるほど、強くはない。


ニホンジンは『個人』にはなれない、なれるのは『孤人』だけだ。

*1:ネット右翼が」とか「オルタナティブに」なんて言葉を振り回して、回りの人に叩かれまくってブログが炎上したりね

*2:オタクや趣味で繋がってる人達

*3:http://www.surpara.com/とかの検索キーワードの多さと細かさは凄いよね

*4:そんな孤人が外の世界に繋がろうとしたら、嫌でもセカイ系になるしかないよね。